ユーザーデータのクラウド同期は、単なるアップロードとダウンロードではありません。転送中のプライベートな内容を守り、保存コストを抑え、複数デバイスの書き込みを順序づけ、データの形を理解し、危険な削除の前に確認し、判断が間違っていたときの戻り道を残す必要があります。
Orkas はクラウド同期を、裏側の補助機能ではなく製品の重要な設計境界として扱います。会話、エージェント、スキル、タスク状態、知識ファイル、設定をデバイス間で動かしながら、責任の線を明確にします。デバイスは内容を準備し、オブジェクトストレージは暗号化されたデータを保持し、サーバーは正本となる索引を公開します。
この設計を、暗号化された内容の流れ、内容識別子にもとづく保存、アカウント単位の同期ロック、サーバー側の確定処理、決定的な同期ルール、モデル支援による競合処理、削除確認、同期ごみ箱、復旧用の印という枠組みで見ていきます。
同期の約束
各同期処理は四つの問いに答えます。どの内容を動かせるか、どう保護するか、誰が次のクラウド索引を公開できるか、そして判断を戻すには何が必要かです。
暗号化された内容の流れ
ユーザーデータは、クラウド保存に届く前にデバイス上で準備されます。同期エンジンは候補となる内容を選び、内容の識別子を計算し、データを暗号化し、短時間だけ使える権限でアップロードします。取得時にはメタデータと識別子を検証してから、デバイスに反映します。
保存と索引
Orkas は保存されるデータとクラウド索引を分離します。内容オブジェクトは暗号化されたデータを保持します。クラウド索引は、存在すべきデータ項目、内容の識別子、バージョン、サイズ、クラウド側の更新番号、削除状態を記録します。デバイス基準は、前回成功した同期のあとに何を確認したかを保持します。
一回の同期処理
一回の同期処理は、最初は軽く確認し、実際に作業があるときだけ厳密な流れに進みます。Orkas はまず変更の有無を確認し、アカウント単位の同期ロックを取得し、その有効期間内で差分を再計算し、内容を移動し、サーバーに索引操作の確定を依頼し、最後にデバイス基準を更新します。
同期ロック、書き込みロック、確定処理
アカウント単位の同期ロック、サーバー側の書き込みロック、確定前のバージョン確認は、それぞれ別の問題を解きます。同期ロックは複数デバイスが同時に完全な同期処理を走らせる無駄を減らします。サーバー側の書き込みロックは索引の書き込みを順番にします。確定前のバージョン確認は、古い読み取り結果が次の正本になることを防ぎます。容量計算とデータ形式の確認も、同じサーバー側の確定処理で行われます。
競合より先にルールで判断する
多くの同期判断は競合ではありません。デバイスは、基準、現在のデータ状態、クラウド索引を比較します。クラウドだけが変わったら取得し、デバイスだけが変わったら送信します。両方が変わったときだけ、内容の種類に応じた統合に進みます。何かが消えている場合は、即削除ではなく削除安全確認の流れに入ります。
競合処理
両側が本当に変更された場合でも、Orkas は最後に書いた側をそのまま優先する方式にはしません。追記型ログは不足している記録を足せます。一覧型データは安定した記録識別子で統合できます。構造化された JSON はバージョン番号と時刻を使えます。Markdown とバイナリファイルは保守的に扱い、無損失の統合を証明できない場合は、採用されなかった側の完全なコピーを残します。
意味が曖昧な文章や構造化データの競合では、関連する版をモデル支援に渡せます。モデルは競合を説明し、統合案を作り、ユーザーの選択を助けられます。ただしモデルだけに任せるわけではありません。決定的な検証、元データの退避、ユーザーに見える復旧経路は残ります。
削除確認
Orkas では削除を状態の変化として扱います。クラウド側の削除は削除印になり、デバイス側の削除は候補操作になります。Orkas は最近の書き込みを確認し、大量削除を検出し、消えるユーザーデータが危険に見える場合は同期処理を止めて確認を求めます。
同期ごみ箱と復旧
有効な削除がデバイス上のコピーを取り除く前に、Orkas はそれを同期ごみ箱へ移します。競合で採用されなかった版は、見直しのために退避されます。オブジェクトのアップロードが成功し、確定処理だけが失敗した場合は、次回の同期でそのデータを再利用できます。ユーザーがクラウドデータを明示的に消した場合、他のデバイスはクリーンアップ印を見て、古い内容を再アップロードしません。
この設計で得られるもの
この同期システムでは境界が明確です。デバイスは内容を準備して検証します。オブジェクトストレージは暗号化されたデータを保持します。サーバーは索引を公開します。アカウント単位の同期ロックとサーバー側ロックが処理を整えます。ルールがよくある変更を処理します。モデル支援が曖昧な競合を助けます。削除確認と同期ごみ箱が、取り返しのつきにくい誤操作からユーザーを守ります。
Orkas がクラウド同期に求める水準はここにあります。魔法でも、単純なミラーリングでもなく、ユーザーデータを複数デバイスの間で動かしながら、それでも一貫した体験として扱える仕組みです。