「AI社員」という言葉が広がり、作り方の解説も増えました。ただ、その多くは Claude Code をターミナルで動かす方法です。プログラミングに慣れていない人にとっては、最初の一歩がいちばん重くなります。
この記事では、ターミナルを使わずに 1 体目の AI社員を作り、2 体目からチームにして、毎週の仕事を任せるところまでを、デスクトップアプリの Orkas で通して説明します。コピーして使える職務記述書のテンプレートと、ほかのツールで作る場合との違いもまとめました。
この記事の結論
- 最初は 1 つの業務に絞る。毎週くり返し、手順を人に説明できて、結果を 5 分で確認できる仕事から始めます。
- 職務記述書を 1 枚書く。役割、入力、出力、ルール、合格ライン、止まる条件を決めます。
- 確認しながら任せる範囲を広げる。2 体目からはリレーでつなぎ、最後の確認は人がします。
AI社員とは?チャット AI との違いは「役割・記憶・継続」
この記事でいう AI社員は、決まった業務を、決まった手順で、続けて担当する AI のことです。
チャットで AI に頼むときは、毎回「何を、どんな形で、何に気をつけて」を説明し直します。AI社員はそれを職務記述書として持ち、これまでに決まったことを記憶しています。だから 2 回目からは「今週の分をお願いします」だけで仕事が進みます。
「AI エージェント」とよく混同されますが、AI エージェントは仕組みの名前で、AI社員は使い方の呼び名です。Orkas では、AI社員を「エージェント」として作ります。
最初の 1 業務の選び方
1 体目は、次の 4 つを満たす業務から選ぶと失敗しにくくなります。
- 毎週くり返す。一度きりの仕事では、職務記述書を書く手間に見合いません。
- 手順を人に説明できる。人に説明できない仕事は、AI にも任せられません。
- 間違えても取り返せる。外に出る前に人が止められる仕事にします。
- 結果を 5 分で確認できる。確認に 1 時間かかるなら、自分でやったほうが早い仕事です。
小さな会社で最初に任せやすいのは、たとえば次のような仕事です。
| 分野 | 最初に任せやすい業務 | 成果物 |
|---|---|---|
| EC・ネットショップ | 新商品の説明文、レビューの要約 | 商品ページの下書き、要約メモ |
| コンテンツ・SNS | 投稿案、ブログ記事の下書き | 投稿文 3 本、記事の初稿 |
| SEO | 週次の順位チェック | 先週との差分レポート |
| 事務・サポート | 問い合わせへの返信 | 返信文の下書き |
逆に、金額の決裁、お客様への最終的な送信、個人情報にかかわる判断は、最初は任せないでください。AI社員に任せるのは下書きまでにして、決めるのは人です。
職務記述書の書き方(テンプレート付き)
AI社員の出来は、職務記述書でほぼ決まります。1 体につき 1 枚、次の 8 項目を書きます。
- 名前と役割:何を担当し、どうなったら完了か。
- 入力:読んでいい資料と、読んではいけないもの。
- 出力:つくるもの、形式、置き場所。
- ルール:文体、使わない言葉、作ってはいけない事実。
- チェック基準:合格ライン。
- 止まる条件:どんなときに人に返すか。
- 動くタイミング:いつ仕事を始めるか。
- 振り返り:人が直したところを、どこに書き足すか。
以下は、ネットショップの「SNS担当」を例にした記入例です。「例」の部分を自社の内容に書き換えて使ってください。
AI社員 職務記述書
1. 名前と役割
- 名前:SNS担当
- 役割:毎週、新商品の情報から Instagram の投稿案を 3 本つくる
- ゴール:店長が 5 分の確認で予約投稿できる状態にする
2. 入力
- 使う資料:ライブラリの「今週の新商品」、ブランドガイド
- お手本:反応がよかった過去の投稿 10 本
- 読んではいけないもの:顧客名簿、売上データ、個人情報を含むファイル
3. 出力
- 成果物:投稿文 3 本+ハッシュタグ+画像の指示
- 形式:1 本ごとに見出しを付ける。本文は 200 字以内
- 置き場所:ライブラリに「日付 SNS 投稿案」という名前で保存
4. ルール
- 文体:です・ます調。絵文字は 1 投稿につき 2 つまで
- 使わない言葉:「最安」「絶対」「業界 No.1」
- 作ってはいけない事実:価格・在庫・発売日は、資料にあるものだけを使う
5. チェック基準
- 商品名と価格が資料と一致している
- 1 本 200 字以内になっている
- 3 本の書き出しがすべて違う
6. 止まる条件
- 資料に価格が書かれていない商品がある
- クレーム・返品・値引きにかかわる内容
- 判断に迷ったら、作らずに質問を書いて止まる
7. 動くタイミング
- 毎週月曜の朝 9 時。ほかに、店長から頼まれたとき
8. 振り返り
- 人が直したところは「4. ルール」か「5. チェック基準」に 1 行ずつ書き足す
- 同じ直しが 3 回続いたら、この職務記述書そのものを見直す埋められない項目がある業務は、まだ AI に任せる段階ではありません。先に人がやり方を書き出しましょう。
Orkas で 1 体目を配属する 5 ステップ(ターミナル不要)
ステップ 1:インストールして、使う AI を選ぶ
Orkas は macOS と Windows に対応したデスクトップアプリです。インストールしてログインすると 500 クレジットが付き、Orkas が用意する公式モデルをすぐに使えます。AI の使い方は、ほかにも 2 つあります。
- 自分の API キーを使う。「モデルと認証情報」→「モデルを追加」から、OpenAI、Anthropic、Gemini、DeepSeek、OpenRouter などのキーを登録できます。
- 手元の Claude Code や Codex をつなぐ。「エージェントを接続」から、外部エージェントとして追加します。それぞれのツールをインストールし、自分のアカウントでログインしておく必要があります。
ステップ 2:プロジェクトを作り、資料をライブラリに集める
仕事のまとまりごとにプロジェクトを作ります。商品情報やブランドガイドなど、AI社員が読む資料は「ライブラリに追加」で 1 か所に集めます。
会社として守るルールは、プロジェクトの「目標とルール」に書きます。4,000 字まで書けて、プロジェクト内のすべてのタスクが最初に読み込みます。
ステップ 3:エージェントを作り、職務記述書を渡す
「エージェントを作成」を押すと「新規エージェント」が開きます。「名前」と「概要」(何をするかを 1 行で)を入力すると、続く編集画面のチャットで AI が「ワークフロー」(仕事の手順)を書いてくれます。そこに職務記述書を貼り、「この内容でワークフローと納品基準を整えて」と頼みます。合格ラインは「納品基準」に入ります(5 項目まで)。
フォームを使わずに、チャットで Commander(Orkas の指揮役の AI)に「毎週 SNS の投稿案を作る担当がほしい」と頼んで作ることもできます。
名前は漢字と英数字で付けてください(例:SNS担当)。メンションで呼び出すための仕様で、ひらがなとカタカナは使えません。
ステップ 4:本物の仕事で試す
プロジェクトで新しいタスクを始め、作ったエージェントに今週の分を頼みます。最初の成果物は、たいてい形が少しずれています。見出しの付け方や長さなど、5 分で確認できる形になるまで出力の形式を直します。
ステップ 5:直したところを書き戻す
人が直したところは、その場で終わらせずに書き戻します。そのエージェントだけの話は編集画面でワークフローや「納品基準」へ、プロジェクト全体の決まりは「目標とルール」へ。同じ直しが 3 回続いたら、職務記述書そのものを見直すタイミングです。
画面の詳しい操作は、ドキュメントのエージェントの章にまとめています。
記憶と引き継ぎ:同じ説明を 2 回しない
Orkas の記憶は 3 つに分かれています。
- エージェントの記憶:その AI社員だけが使う記憶です。
- プロジェクトメモリ:そのプロジェクトで決まったことです。
- グローバル共有メモリ:会話やエージェントをまたいで使う、長く変わらない事実です。
AI は、長く役に立ちそうな事実を、頼まなくても自分で保存します。プロジェクトメモリとグローバル共有メモリに書き込めるのは Commander だけで、専門のエージェントが書くのは自分の記憶だけです。人は「メモリー」の画面から、いつでも追加・編集・インポート・エクスポートできます。それぞれ 16 項目までなので、残すものは絞ります。
- 残すもの:決まったこと、何度も出てくる直し、取引先ごとの好み。
- 残さないもの:個人情報、パスワード、その場かぎりの指示。
2 体目から「チーム」にする:Commander がリレーをつなぐ
1 体目が安定したら、前後の工程に 2 体目、3 体目を置きます。たとえばネットショップの SNS なら、次のような分担です。
- リサーチ担当:新商品の資料と過去の反応から、伝えるポイントをまとめる。
- SNS担当:そのポイントをもとに投稿案を 3 本つくる。
- チェック担当:チェック基準に沿って確認し、ダメなら差し戻す。
- 店長(人):最後に確認して、予約投稿する。
担当ごとに職務記述書を 1 枚ずつ書き、それぞれをエージェントとして作ります。つなぎ方は 2 通りです。
- Commander に任せる。「今週の新商品 3 点の投稿を作って」と頼むと、Commander が担当ごとに仕事を振り分け、前の担当の結果を受け取って次の担当に渡します。互いに関係のない作業は同時に進めることもできます。
- 自分で順番を指定する。チャットで複数のエージェントを @ で呼び、「順番に実行」を選びます。
毎週の仕事にするなら、プロジェクトの「ToDo」を使います。ToDo に担当のエージェントを選んで「今すぐ処理」を押すと、終わったものは「確認待ち」になり、人が確認して「完了」にします。「自動推進」をオンにすると、Commander が準備のできた ToDo を 1 件ずつ進めます(1 日に最大 20 件)。
Commander のしくみは、Commander の紹介ページにまとめています。
毎日・毎週の仕事を任せる:「自動化」とその限界
決まった時間に動かしたい仕事は「自動化」に登録します。頻度は「一度のみ」「x 時間ごと」「毎日」「毎週」「毎月」から選べます。登録したら「今すぐ実行」で一度試しておきましょう。
ただし、次の点は先に知っておいてください。
- Orkas が起動しているあいだだけ動きます。
- アプリを閉じていたあいだの分は、あとから実行されません。「一度のみ」の自動化も同じです。
- 設定したパソコンでだけ動きます。
- Windows では、ウィンドウを閉じるとアプリも終了します。
仕事用のパソコンが起動している時間帯に合わせて登録するのが確実です。パソコンを閉じていても動いてほしい仕事なら、クラウドで動くほかのツールも検討してください(後半の比較を参照)。
人がやること:最終確認・判断・機密情報
AI社員がいても、次の 3 つは人の仕事として残します。
- 外に出す前の確認。投稿、メール、ページの公開は、人が見てからにします。
- お金と約束。値引き、返金、納期の約束は人が決めます。
- 個人情報の判断。どの情報を使ってよいかは人が決めます。
機密情報にも気をつけてください。Orkas を使うにはログインが必要で、AI の処理はクラウドのモデルで行われます。AI社員に渡す資料は社内のルールに沿って選び、顧客の個人情報は入れないようにします。API キーやコネクターの認証は、使う人それぞれのものです。
人の同僚と一緒に回すこともできます。Orkas 1.8 から、プロジェクトをほかの人と共有できるようになりました。無料アカウントでは最大 3 件のプロジェクトを共有でき、各プロジェクトに所有者を含めて最大 3 人が参加できます。メンバーは無料アカウントで参加できます。ToDo を担当メンバーに割り当てると、その人のパソコンで、その人の AI が処理します。共有されるのは目標とルール、メモリ、ライブラリ、ToDo、そして共有したエージェントで、会話は共有されません。
ツール別の作り方:Claude Code・Codex・ChatGPT・Gemini・Copilot
AI社員は Orkas 以外でも作れます。2026 年 10 月時点の、各ツールでの主な作り方は次のとおりです。最新の仕様は各社の公式ページで確認してください。
| ツール | AI社員の作り方 | 補足 |
|---|---|---|
| ChatGPT | プロジェクトに指示とファイルをまとめる | スケジュール済みタスクで定期的に動かせる(プランごとに件数の上限あり) |
| Gemini | Gem に指示を保存して使い回す | スケジュールされたアクションは有料プランなどで使え、同時に 10 件まで |
| Microsoft 365 Copilot | エージェント ビルダーで指示とナレッジを設定する | SharePoint や OneDrive の社内資料を知識として使える |
| Claude Code | リポジトリにルールのファイルやスキルを置いて作る | ターミナルのほか Claude のデスクトップアプリでも使える。Routines(研究プレビュー)はクラウドで動き、パソコンを閉じていても実行される |
| Codex | ChatGPT のデスクトップアプリなどから、フォルダやリポジトリを対象に作業する | ソフトウェア開発向け |
| Orkas | エージェントを作り、プロジェクトの ToDo や自動化で回す | ターミナル不要。Claude Code や Codex もエージェントとしてつなげる。自動化はアプリ起動中のみ |
開発に慣れていて、仕事がリポジトリの中にあるなら、Claude Code や Codex をそのまま使うのがいちばん強力です。パソコンを閉じていても定期的に動かしたいなら、クラウドで動く仕組み(Claude Code の Routines など)が向いています。
一方で、プログラミングを使わない業務で、複数の担当にリレーさせたい、資料・ToDo・自動化を一か所で管理したい、という場合は Orkas が向いています。手元の Claude Code や Codex を Orkas のエージェントとしてつなぐこともできます。詳しくはClaude Code と Codex を一緒に使う方法をご覧ください。
参考:ChatGPT のスケジュール済みタスク、Gemini のスケジュールされたアクション、Microsoft 365 Copilot のエージェント ビルダー、Claude Code の Routines
費用の目安
2026 年 10 月時点の Orkas の料金です。最新の価格は料金ページで確認してください。
- 無料:ダウンロードは無料です。デスクトップアプリにログインすると 500 クレジットが付きます。
- Lite:月額 11.99 ドル。毎月 5,000 クレジット。
- Pro:月額 19.99 ドル。毎月 10,000 クレジット。
- Max:月額 79.99 ドル。毎月 50,000 クレジット。
自分の API キーを使う場合、AI の利用料はキーの提供元に支払います。Claude Code や Codex をつなぐ場合は、それぞれの契約の範囲で動きます。
よくある失敗と対策
- 詳しい社員 1 人に丸投げする。職務記述書は、その仕事をいちばん知っている人が書きます。仕組みに詳しい人は手伝う側に回ります。
- ルールを書かずに始める。口頭で直した内容は残りません。直したら職務記述書に書き足します。
- いきなり全部を自動にする。最初の数週間は、毎回人が確認します。止まる条件がきちんと働くのを見てから、範囲を広げます。
- 役割を広くしすぎる。「マーケティング全般」ではなく「毎週の投稿案 3 本」のように、1 つの成果物に絞ります。
- 合格ラインがない。何をもって完了とするかを、チェック基準に書きます。
- 機密情報を混ぜる。顧客名簿やパスワードは、資料にもメモリにも入れません。
よくある質問
プログラミングの知識は必要ですか?
いいえ。Orkas では、エージェントの作成も、資料の追加も、自動化の登録も画面から行えます。ターミナルは使いません。
無料で作れますか?
はい。Orkas は無料でダウンロードでき、デスクトップアプリにログインすると 500 クレジットが付きます。自分の API キーを使うこともできます。
ChatGPT や Claude のプロジェクトとは何が違いますか?
指示とファイルをまとめる点は同じです。Orkas では、そのうえで複数のエージェントにリレーさせる、ToDo と自動化で毎週回す、手元の Claude Code や Codex もつなぐ、といったチームで回す部分までを一つのアプリでできます。
パソコンを閉じていても働きますか?
いいえ。Orkas の自動化は、アプリが起動しているあいだだけ動きます。閉じていたあいだの分は、あとから実行されません。
日本語で使えますか?
はい。画面は日本語に対応しています。ただし、標準で入っているエージェントの名前(ContentWriter など)は英語表記です。
社内の資料を渡しても大丈夫ですか?
社内のルールに沿って判断してください。Orkas の利用にはログインが必要で、AI の処理はクラウドのモデルで行われます。顧客の個人情報やパスワードは渡さないようにしてください。
まとめ
AI社員づくりは、ツール選びよりも、1 つの業務と 1 枚の職務記述書から始まります。1 体目が安定したら前後の工程に担当を増やし、Commander にリレーを任せる。確認と判断は人に残す。この順番で進めれば、プログラミングなしでもチームとして回せます。
AI の専門チームに仕事を任せて、一人でもチーム規模の成果を。Orkas は無料でダウンロードできます。